ゴミバコ

本や音楽のレビューがあるかもしれません。別に通とかじゃないです。

窓の魚/西加奈子

温泉宿で一夜を過ごす、2組の恋人たち。静かなナツ、優しいアキオ、可愛いハルナ、無関心なトウヤマ。裸の体で、秘密の心を抱える彼らはそれぞれに深刻な欠落を隠し合っていた。決して交わることなく、お互いを求め合う4人。そして翌朝、宿には一体の死体が残される──恋という得体の知れない感情を、これまでにないほど奥深く、冷静な筆致でとらえた、新たな恋愛小説の臨界点。

ううむ…。また不思議な作品を読んでしまった…。

宿での同じ時間を、登場人物それぞれの視点から語っていく形式。同じ出来事なのに人間ごとに全く異なる感じ方をするものだな、と思い知らされました。

登場人物はどこか少しずつ狂っていて、お互いに奇妙な感情によってつながっており、孤独でもある。あらすじには「恋」と書いてありますが違和感を覚えます。ただ「恋は下心」なんていうけど、本当の意味で「下心」なのかもしれません。

登場人物の言動は理解できないものがほとんどなのに、何故か心にこびりついてしまう。

人間がもつ「負」の感情が、「宿」「露天風呂」などといった設定と上手く絡み合って美しく描かれていました。

結局、「窓の魚」とはどんな役割だったのだろうか…。透明な仕切りに映し出された自分を見つめることで狭められた世界を認識する、登場人物自身の象徴なのだろうか。