ゴミバコ

本や音楽のレビューがあるかもしれません。別に通とかじゃないです。

ナイフ/重松 清【ネタバレ注意】

「いじめ」あるいは「学校」をテーマとした5つの話で構成されています。結構重い話ですが、文体は読みやすかったです。

いじめの内容は…ここまできたら逆に犯罪として対処しやすいのでは?と思ってしまいました。それともこのくらい普通に行われているのでしょうか。だとしたら胸が痛いですが、こういう「ザ・いじめ」というものより「何となく浮いている」とかジメジメしたいじめの方が毒素が強いように思いました。現代はこっちのが多そう。

「いじめ」を様々な角度で捉えています。被害者、加害者、親、先生、傍観者…。

印象的だった話は「キャッチボール日和」と「エビスくん」ですかね。

「キャッチボール日和」に出てくる父親は僕が一番嫌いなタイプです。試練を与えれば強くなるという考えが腹立たしいです。上手く乗り越えられれば強くなるかもしれませんが、トラウマとして一生残ってしまうことがあります。受けた傷は完治することもありますが、瘢痕として一生残ることもある。免疫獲得ではなくてアレルギーとして永遠にそれを受け付けなくなる場合もある。ふむ、なかなか医学的な例え…‼

だいたい本人が「乗り越えて強くなった!」と思っていても、実は同時に失っているものもあるのではないでしょうか。例えばいじめにおいてやり返すとなったら少なくとも誰かを傷つけなくてはなりません。やり返さずに耐えたとしても、ボロボロの心に失ったものが無いなんてありえないはずです。

「コンジョーやキアイのないコっているんだよ。歌の下手なコや、手先の不器用なコや、数学の苦手なコがいるのと同じように。」という一文がささりました。ほんそれ~~~。

「エビスくん」は最初胸糞かと思いましたが、最後は晴れやかに終わります。本当に良かった。

何気に文庫版のあとがきに衝撃を受けました。あの体験が無かったらこの作品には出会っていなかったのだと思うと、複雑な気持ちです。是非あとがきまで読んでほしいです。