ゴミバコ

本や音楽のレビューがあるかもしれません。別に通とかじゃないです。

蹴りたい背中/綿矢 りさ【ネタバレ注意】

名前は聞いたことがあるし気になっていた本、読み終えました。

インストールでも書きましたが、この著者は表現が独特で、好き嫌い、評価するしないわかれると思いますが、僕は大好きです。年をとるにつれて、芸術に「詳しさ」を求めないようになってきました。くどくどと哲学めいた文章や歌詞よりは、斬新な表現でいかに読むものに考えさせるか、の方が重要に思えてきました。成長したんですね。これぞアローラの力。

冒頭なんか最高にキレッキレです。村上春樹の「やれやれ。」のように「っていうスタンス。」はゴミズノの中で流行語大賞受賞候補となりました。おめでとうございます。

主人公の学校での感情は、孤独を感じたことがあるのならば痛いくらい共感できるかと思います。逆にそうでない方は、なんでこいつこんな突っ張ってんのと思う方もいるかもしれません。

にな川に対する嫌悪感、見下し、興味、愛情がないまぜになったような感情を、「蹴りたい」という表現で示したのには鳥肌がたちました。題名からイメージした感情とは全くことなっていたので、こんなにもムズムズした気持ちになるとは思っていませんでした。まずこの感情を取り上げようとしたことがすごいと思うんです。こんな感情、自分がもったら汚いと思って蓋をしていたでしょう。

最後の終わり方もすっごくお洒落です。「人を思う」っていうのは、抱きしめたりキスしたり、だけではないのは確かですね。