ゴミバコ

本や音楽のレビューがあるかもしれません。別に通とかじゃないです。

美しい刃

最近は収まったようですが、ちょっと前までこの人の歌がyoutubeの広告で嫌でも耳に入ってきました。

この人の歌を聞いて思うのは、芸術はやっぱり「美しく」あって欲しいということ。

「綺麗な言葉で」とか「綺麗な色遣いで」ということではなくて、作る人はちゃんと「美しい」と思って作って欲しいということ。

芸術は自己表現の手段ですが、やっぱり「美」という意識は大切だと思います。自分が伝えたいことを吐露するだけならこうやってブログとかに書いてしまえばいい。わざわざ音をつけたり絵にしたり物語にする意味はないと思うのです。自分の伝えたいことに音やイメージやストーリーが絡み合って「美しく」なってはじめて芸術にする意味があると思うのです。

「等身大の歌詞」とか「素朴な歌詞」とかありますが、あれも美しく計算された「等身大」、「素朴」だと思うんです。作り手がどうすれば等身大に伝わるか、どうすれば素朴に伝わるか、こだわってこだわって成り立っているんじゃないのかな。例えばだけど、「愛してるの響きだけで 生きていける気がしたよ」も、なんか素朴に聞こえるけれど、他の言い回しだと全然雰囲気変わるじゃないですか。「愛してるって言われただけですごく生きた心地がした」「愛してくれて、ありがとう」etc…。他の言葉にすると、元の歌詞が持つ素朴で可愛くていじらしいような雰囲気皆無じゃないですか。そんな感じ。

汚いことを表現するときも、どうすれば見事な「汚さ」を表現できるかこだわりぬいてほしい。ミスチルの「フェイク」とか凄まじく美しい汚さ。あれは名曲だと思う。

もちろん逆も駄目だと思います。中身が伴わず綺麗な言葉だけを羅列するのは無意味ですよね。

作品を刃で例えるならば、その作品を見て人は何かしらを感じて胸を射られる。その刃が美しければ人は自分の胸に刺さったそれを手に取って、愛しいと思い、自分の糧にしようと思える。その刃が美しくなければ、顔をしかめながら刃を抜き取って、傍らに捨ててしまう。

もちろん作者本人に美しさを追求しながら作った、と言われたらそれまでなんですが、それはもう「僕とはセンスが合わなかった」としか言いようが無いですね。

前々から思っていたんですが私は何様なんでしょうね。